2023年5月 御座候と大福餅

 御座候をご存じですか。中に小豆餡子の入った大判焼のことである。こちらが大判焼きと言っても京都育ちの息子の嫁さんは御座候の方が正しいと絶対に譲らない。ご存じの方も多いと思うが、横浜高島屋デパートの地下一階で“御座候”の暖簾を下げ、実演、販売している。私はこれが大好物でよく購入している。前は一個、80円だったが、最近値上げされた。それでも他の高級お菓子に比べ、安価である。いつも数人、時には10人以上の行列ができている。女性が多いが男性も数人は混じっている。年配者が多い。焼き方専門の男性が2人、いつも黙々と焼いている。その手付きは鮮やかなものである。直径 cmくらいの円形の窪みがで横に8個くらい、縦に4個くらい並んだ長方形の銅板の下ではバーナーが常に点火されており、高温状態にある。焼き手は水で練られた小麦粉の入ったロート状の容器から、この穴に素早く次々液状の小麦粉を溢れない程度に注入していく。ある程度焼きあがったところで、その中心に今度は半円筒状の細長い雨樋のような容器に入った餡子をへらで1個ずつ掻き落として行く。頃合いを見て餡子の入っていない方の片側の皮を錐のような治具で突き刺し、救い上げながら、裏返しにして餡子を覆いかぶせるように次々乗せていく。数分すれば出来上がり、次々保管容器に入れていく。一連の動作は流れるように見事で、見ていて飽きない。長い列の最後についていてもいつの間にか、自分の購入する番になっている。これを二人の売り子の女性が客の要求する個数をボール紙製の箱に詰め包装し、お金と引き換えに客に渡していく。その手際も客を待たせることなく見事である。それにしても焼く人も売る人も、来る日も来る日も一日中同じ動作を繰り返すその忍耐強さに驚嘆する。自分なら半日持つか持たないか。働いて賃金を得るのは大変なことなのである。

 大福餅も大好きである。呑み助なら絶対にしない、日本酒を飲みながらでも

おいしく食べることができる。月、1、2回「ますだや」さんという上大岡にある餅専門の和菓子屋に買いに行く。この店は湘南区が市民向けに発行した散歩用の地図に載っているのを見つけたのである。先日、偶然ネットで知ったのだが、神奈川県和菓子屋ランキングの第5位に入っていた。京浜急行線、上大岡駅の高架橋の東側の道路沿いにある。この店の餅は、本物で翌日には少し硬くなる。スーパーやコンビニで売っている餅類には添加物が多く、ソルビトールという餅を固化させない薬品も入っていることが多い。すぐに固くなれば商品価値がなくなるからであろう。店は家からは4-5 km、晴れた日には散歩を兼ね、大岡川沿いの桜並木を歩いていく。途中にカワセミのいる箇所があって、いつも数人の人が長い望遠レンズ付きのカメラを構え、シャッターチャンスを狙っている。

 子供たちが小さかったころは、「もちっこ」という東芝から販売されていた自動餅つき機で餅をつき、よく大福餅も作った。ただし、素人の悲しさ、餅を切り取る大きさが不ぞろいになるため、出来上がった大福餅の大きさも不ぞろいだった。それでもおいしかった。もう、何年も自分では作っていない。