2020年8月 天気予報は誰のため

 

 子供達がまだ小さかったころ,夕食の時などに私が「明日は晴れるな,とか雨だよ」などと言うと彼らは不思議そうな顔をし,妻はまた始まったという顔をした.かなりの確率で当たったように思う.種明かしをすれば,ご飯茶わんに飯粒がくっつき,離れにくい時は外気が乾燥している証拠で多分晴れ,飯粒が茶碗に付かぬ時は湿度が高く雨の確率が高いのである.誰に教わったのか忘れてしまった.あるいは少年雑誌の付録についていた“これを知っていれば鼻が高い”といった豆知識から学んだのかもしれない.“燕が低く飛ぶときは雨が近い”,“西空が夕焼けの時は明日は晴れ”なども理にかなった教えであろう.  

昨今は気象衛星“ひまわり”からの情報と大型コンピュータによる膨大なデータの蓄積と解析技術の進歩のおかげで時々刻々とピンポイントで各地の天気予報が判るようになってきている.朝,晩のTVの天気予報も微に入り,細に入りいろいろの情報を流している.「今日は午前中から午後の早いうちは晴れていますが,夕方にはにわか雨がありそうですから折り畳み傘を用意するとよいでしょう」.勤務先に置き傘を用意している人も多いだろうに.「夕方,帰宅の頃には冷えますから,カーデガンを用意する方がよいでしょう」,「今日は雨の心配がありませんから洗濯ものは外に干しても大丈夫でしょう」,あるいは「午後,にわか雨が予想されますので,外出の際は洗濯物を室内に取り込んでから出かけましょう」云々.いらんお世話である.あまりにも内容がパターン化されていてかつ幼稚すぎる.大の大人が自分の行動を自分で決められないのだろうかと腹立たしくなる.あまりにも視聴者を馬鹿にしていないだろうか.私が見るのは主にNHK TVであるから,東京,千葉,神奈川,埼玉県辺りが視聴範囲,その対象は話の内容から,首都圏に通勤する人々と家庭に在宅する主婦が想定されているようである.天気予報の担当者は,一度,天気予報をどのような人々が見るのか,また,天気予報がどのような時に利用され,役に立っているのかアンケート調査をやってみては如何であろうか.かって,NHKの名物アナウンサーだった有働有美子氏が,ある年の年末の報道番組か天気予報だったかは忘れたが,朝の放映の最後に「今晩は,飲みすぎに注意しましょう」とやったことがある.彼女は相当の飲兵衛らしい.これはまあ,愛嬌として,農業,漁業,土木建築業,個人経営店,その他私の思いも及ばない職種の人々が天気予報を頼りにしているに違いない.そのような人たちにも役立つような情報が提供されるべきであろう.

もう一つ解せないのは,天気予報を報じるアナウンサーの服装である.「連日,猛暑日が続きますが,今日も暑いでしょう.40℃以上になることが予想される地域は・・・です.熱中症に注意し,日中の外出はできるだけ控えましょう.云々」と告げる男性アナウンサーがスーツでネクタイを締めているのである.私の体験では20℃以上になるとスーツを着るのが暑いと感じられる.スタジオは多分,20℃以下であろう.省エネの観念がNHKにはないらしい.他方,女性アナウンサーは半袖姿である.彼女たちは多分,寒いのを我慢していることであろう.念のため,2局ほど民間放送のニュース,天気予報番組を見たが,やはり男性アナウンサーはほとんどスーツでネクタイ姿,女性アナウンサーは半袖姿だった.男性アナウンサーが視聴者の前に姿を晒すとき,ネクタイ,スーツ姿でなければ失礼であるという観念があるのであろう.そのために,夏のスタジオも冷やしているのである.一刻も早く,スタジオの気温を27℃近辺とし,男性アナウンサーもクールビズ姿になるべきである.