子供の四季  八月

 ○火の用心(夜回り)
 小学校5, 6年生頃からだったか、中学生になってからだったか忘れてしまったが、子供の仕事として夜回りがあった。季節によって時間帯は変わったが、夜、7時から8時ころになると2, 3人で町内を夜回りした。拍子木をカチ、カチと打ちながら、「火の用心、火の用心」と大きな声を張り上げて、錫杖(しゃくじょう、1 mくらいの鉄の棒で先端が丸く輪になっていてそこに直径4, 5 cmくらいの鉄の輪が2, 3個通してあった。山伏が持っていた) を引きずりながら歩いた。鉄の輪が互いにぶつかり合って、錫杖がじゃら、じゃら音をたてた。拍子木の2本の末端には穴が開いていて、長さ1 mくらいの組紐でつないで結んであった。紐を首にかけ、両手で一本ずつ拍子木を持って打ち鳴らしたのである。大した距離ではなかったから、30分もしないうちに終わったよう覚えている。大人の同伴があったか、なかったか定かでないが、子供たちだけだったような気がする。途中で大人の人たちに会うとご苦労様と言われ、誇らしい気持ちになったものである。拍子木と錫杖を毎晩、次の班に渡して行ったのか、一週間同じ班でやった後次の班にパスしたのかも忘れてしまった。今では考えられないことだが、当時は子供たちも重要な任務を担って社会の一端に組み込まれていたのである。このようなことは重要なことではないだろうか。昨今、いじめ、ひきこもり、刃物を振り回すなどの少年犯罪は当時はあまりなかったように思われる。子供たちは地域の一員として認識され、周囲からしっかり見守られていたためではなかろうか。