2014年5月 女性が長生きする理由

20145月   女性が長生きする理由
 
 世界保健機関WHO)が発表した2014年版「世界保健統計」によると,12年の男女合わせた日本人の平均寿命は84歳で前年(83)に続いて世界1位,女性は87.0歳で1位,男性は80.0歳で8位だった。世界の平均寿命は70歳,女性が73歳,男性が68歳で,1990年に比べてそれぞれ約6年長くなったとのことである.なぜ,女性の方が長生きするのだろうか.もう遺伝子に組み込まれている,仕方のないことなのであろうか.あるいは,食生活の違い,ライフスタイルスタイルの違い等いろいろ考えられるかもしれない.私の思い込みであり,偏見と言われても仕方のないことかもしれないが,私は女性が長生きするのは彼女たちが老後,病気その他で体が動かせなくなるまで,毎日,家族の食事の献立を考え,料理するためではないかと考えている.献立を考えるには頭を使う.毎日同じ内容では家族の不評を買うし,栄養バランスも考え,材料を購入する際はあちこち値段を比較しながら品を吟味する.素材を調理する際は油断すれば,手を切るかもしない危険な包丁を扱い,火も使う.うっかりすればやけどをするかもしれない,料理は段取りが大切である.並行しながら,いくつかのことを進めないと出来上がりが遅くなり,たとえば焼き魚が冷めたころ,ご飯が炊きあがったり,みそ汁ができたりでは失格である.このように末期近くまで何十年間も毎日,毎日頭を使い,手足を使うからではないだろうか.脳が活性化されている期間が長いのである.このような思いに至ったのは,私が毎月,3-4日帰省し,その間は養護施設に入っている母を自宅に連れ帰り(ひとりごと 1月参照),母に何を食べさせようかと頭を悩ますようになってからである.帰省する前,あるいは新幹線の車中で,たった3, 4日分であるが,朝昼晩の献立を考え,手帳に書きつけるとほっとする.夜はご飯とみそ汁,焼き魚,翌朝はみそ汁の残りにご飯を入れ,卵を落とす.昼はパン,シチュウ―,夜は鱈の煮つけ,あるいは牡蠣フライ,カレーライス云々.もう101歳の母は新しい洋風の食べ物は一切受け付けないし,私もそんな料理はできない.何十年となく口に慣れ親しんだ,簡単な煮物や素麺,幸い魚が好物なのが助かる.毎月,同じようなパターンであるが,1か月も間が空くと母にばれることもない.
 現役のころ,毎朝出かける際,妻から「今晩は何を食べたいか」と聞かれた.時々の思い付きを言ったり,返事が面倒くさい時は「適当でいいよ」などと
お茶を濁していた.妻の捨て台詞は毎回「定年退職したら今度はあなたに作ってもらいますからね」だった.幸いなことに今のところそのようになっていない.妻は旅行などで,料理の献立を考えなくてすみ,ホテルや旅館で食事を出される時が一番うれしいのだそうな.私も妻孝行のつもりでたまに夕食を作ることがある.毎日といわれると逃げ出したい.
昨今,デパ地下の食料品街に行くとプロが作ったおいしそうな完成品がこれでもか,これでもかと並んでいる.そして,午後ともなればそれらを買い求める主婦らしい女性で身動きもできないほどである.電子レンジで温めればよいレトルト食品も多い.野菜も切り刻んだものが売られ,魚も包丁を使わなくても済む切り身で売られている.私は砥石で包丁を研ぐのが趣味である.我が家の包丁も実家の包丁も良く切れる.娘や嫁が「この家の包丁はよく切れるね」という.時々,彼女たちの家の包丁を研いでいる.子供のころを思い出す.今夜はポテトサラダという日の夕方は,今のようにチューブ入りのマヨネーズソースなどなかったから,その手作りが私の役目だった.卵の殻を半分に割り,黄身だけ落とさないように左右の殻に交互に移し替えながら,殻の隙間から白味を茶碗に落として取り除いた.この黄身に塩を適当に入れ,5-6本の箸で強くかき回すと黄身が固まってくる.そこに菜種油を数滴入れてかき回す.こんなことを数回繰り返すと真っ黄色な黄身が白みを帯び,いわゆるマヨネーズ色になるのである.一度に油を入れすぎるともう黄身は固まらなくなり,だまになった.
 上記に述べたような状況で,主婦の料理に費やす時間の短縮,省力化が進むのは喜ばしいことであるが,私の説が間違っていて女性の寿命の短縮化が進まないことを祈るばかりである.