2021年12月 死蔵される薬

 

 私はもう10年以上、イコペント酸エチル(動脈硬化改善)、シロスタゾール(血管を拡張し、血流を増す)、バルタル酸(血圧降下)など、3種類の薬を朝晩飲んでいる。血圧はほぼ安定しているので、掛かりつけの医院に行くのは3ヵ月ごと、簡単な医師の問診のあと、同じ薬を次の3か月分もらってくる。ところがどうしても飲み忘れるため、医院に行く前日残っている薬の数を数えると数日分、多い時には5日分くらい残っている。食事の後に飲むよう心掛けているのだが、旅行の際持っていくのを忘れたり、アルコールなどが入っているとどうしても飲み忘れてしまうのである。以前は医師の処方箋通りに薬局から3ヵ月分をもらってきていたが、引き出しの中に残りの薬が溜まりだした。これではいけないと医師にお願いし、残った分の数だけ差し引いた日数分を処方箋に書いてもらうようにしている。ところが、不思議なことに同時に飲まなければならないのに、薬によって残りの数が異なるのである。自分では同時に飲んでいるつもりでも無意識のうちに忘れてしまうらしい。これではいけないと食卓に飲む分だけを並べるようにしているのだが。

 妻は乳がんを患ったこともあって6種類もの薬を飲んでいる。私と同様に飲み忘れた薬が引き出しの中にどんどんたまっていく。医院に行く前に残りの日数分を数え、それを差し引いてもらってくるようにと言っているのだが、数え忘れたり、医師に言いそびれ処方箋に記載される日数分のまま、薬局からもらってくるのである。このようなことは我が家だけでなく、全国いたる家庭で起こっているのではあるまいか。おそらく飲まれぬままに膨大な量の薬が戸棚や引き出しなどに眠っていることであろう。資源の無駄遣いである。薬には食料品の賞味期限のように薬効の有効期間があるのだろうか。多分あるとしても、生鮮食料品よりはるかに長いと予想される。この死蔵されている薬を有効に活用する方法はないのであろうか。私が癌検査等でお世話になっているみなと赤十字病院で、待ち時間に暇に任せて待合室の壁の張り紙を眺めていたら、その中の一枚に「飲み残して余っている薬がありましたら医師にご相談ください」といった趣旨の文言が印刷されていた。そのあとどうするのか気になっているが未だ、訊ねていない。良心的な薬局があって、常連には「飲み残しの薬がありませんか」と尋ね、残り分だけ差し引き患者に渡すようにすればよほど死蔵される薬の量は減るのではあるまいか。最も、医師の指示した処方箋の日数分が優先されるだろうから、薬剤師が勝手にそのようなことをするのはルール違反であり、問題視されるであろう。

偶然、TVを見ていたら、今、薬局で薬の品不足が起こっており、その種類は全品種の20 %にも及んでいるとか。その原因は数か月前、某薬品会社の製造品にあってはならない睡眠薬が混入し、事故が発生、薬品製造停止となり、会社は倒産に至った。その影響が国内他社全体に及び、不足薬品の回復に2,3年かかるとか。死蔵されている薬品の出番ではないだろうか。