2021年6月 新型コロナウイルスワクチン接種をめぐる混乱 その2

 6月10日、我々は無事、掛かりつけの医院で1回目のワクチン接種を終えたたが、相変わらずワクチン接種をめぐる混乱が続いている。この日の朝のラジオ体操の折、仲間の一人から驚くべき話を聞いた。彼は5月3日から電話を掛け続け昨日ようやく接種日の予約ができたが、奥さんは数分遅れで予約満了となってしまい、東京都の集団接種会場を勧められた。仕方がなく、予約したが、彼は憤懣やるかたなく怒っていた。緊急事態宣言下、他県にまたがる遠距離外出は控えましょうと言われている最中に、80前後の老婦人(年齢を伺ったことがないが、我々と近い感じである)が、横浜から東京まで出かけていくのである。ワクチン接種のための外出は不要不急の外出の範疇に入らないらしい。 

 9日の党首討論菅首相は「10月~11月には必要な国民、希望する方すべてに打ち終えることを実現したい」とワクチン接種の推進を打ち出した。来るべき総選挙を意識してのことであろう。これを受けて行政機関は右往左往していることだろう。接種率が低ければ、今後の国庫補助予算にも影響が出ようと予測、上記の遠距離接種のような接種率を上げるためのなりふり構わぬ市民へのしわ寄せが出てくるのであろう。二重予約などでなければよいが。ちなみに昨日(13日)の新聞情報によれば、神奈川県のワクチン接種率は下から2番目の46位である。下部の行政機関、担当者自身は一所懸命、それぞれの任務を果たすべく努力されているのであろうが、無駄な空回りしている部分はないだろうか。これだけ、情報網、流通機構の発達している昨今、他機関と融通しあって市民への負担をできるだけ軽減するような措置ができないものなのだろうかとつくづく思う。要するに総合的に適切な判断、指示を下せる指揮系統がないのである。  

13日の朝日歌壇には下記のような痛烈な歌が何首か出ていた。

蜘蛛の糸みたいに細き電話線ワクチン求め犍陀多(かんだた)になる

  年寄りはインターネットは扱えず電話も通じぬコロナワクチン

  宝くじよりは増しかと掛け直すコロナワクチンコールセンター

  二日間に千五百二回電話してやっと取れたよワクチン予約

 結局はワクチン獲得戦争に負けたということ早い話が

 

 このような混乱のそもそもの原因は、先月も述べたように、政府の想像力のなさ、すなわち、早くからわかっていたオリンピックに対する予防措置、国産ワクチン開発のために必要な研究予算の措置を怠ったこと、新型コロナ予防ワクチンの国家単位での確保が他国に比べ遅れたこと、専門家の意見の政府に都合の良いところだけを取り入れ、率直に意見を受け入れなかったことなどである。誰もほとんど使わず捨てたアベノマスクなどは予算を無駄使いした愚策であり、永く不名誉な笑い話として歴史に残ることであろう。その付けが今、国民に降りかかってきているのである。

私は反対であるが、菅首相は何が何でもオリンピックを強行したいらしい。その理由がわからないが、多分、総選挙に勝つためか。80年前、万一の終戦処理や撤退などを考慮せず、がむしゃらに太平洋戦争に突入した東条英樹首相にダブって見えて仕方がない。

 政治家は国民、市民の幸せを願うより先に権力を維持するために、選挙に勝つべく国民に迎合するための直近の政策を考えるのが習性らしい。本来は選挙民の我々が、これを見抜かなければならないのだが。昨今行われた地方都市のいくつかの首長選挙を見ても、各候補者の公約の第一番目にコロナ対策をうたったものが多かった。確かに市民はコロナ禍に困っているが、これはいずれ収束することである。コロナ禍後に何をするかが、最も大切と考えるが、これを公約の第一に掲げた候補者は少なかったように思う。ここまでくれば、あとはオリンピックが無事終わり、コロナ感染が広まらないことを祈るだけである。