2018年3月 昨今のラジオ体操風景

20183月 昨今のラジオ体操風景
 
 定年退職を機に近くの公園で永年にわたって行われていたラジオ体操に参加してから,間もなく8年になる.その当時の参加者は20名前後だったが,最近は30名前後にまで増えた.それだけ,老人の間に健康志向者が増えたということだろうか.もっとも,今冬は寒さが厳しく,雪の降った朝など6名だったこともある.この8年間にいくつかの変化があった.毎朝決まったように集まっていたかっての産業戦士が何かのはずみにホームレスになった,そんな人たちやラジオ体操には参加せず,ベンチで朝からアルコール飲料を飲んでたむろしていた人たち数人がすっかりいなくなった.毎朝のごみ拾い時にときどき彼らとことばを交わしていたが,亡くなったり,動けなくなり施設に入ったりで行方はさまざまである.犬を散歩させている人も多いが,犬も年を取る.よたよた歩いていたり,乳母車に乗って散歩している犬もいる.出会うと「これでは散歩になりませんね」などと笑って通り過ぎることもある.かって,私になついていて,合うと必ず尻尾を振り,身を摺り寄せてきた中型犬も見かけなくなり数年が過ぎてしまった.名前を“ハリー”といった.息子の住む埼玉県は老人の健康寿命が永いとか,犬の飼育頭数が日本一と関係があるという.朝晩,犬の散歩と付き合うためか.
30年近く毎朝トランジスタラジオを持って公園に現れたAさんも身体の動きが不自由になり,ラジオ当番はHさんに,その後Y(女性)さん,そしてこの2月末からは私が引き継ぐことになった.Hさんはラジオ当番をYさんにバトンタッチしたあとも体操には参加していたが,今冬ついに引退された.米寿に近いお年だった.Yさんはラジオ当番とともに永年ごみ拾いも続けていたが,心臓に異変が見つかり,ラジオ当番が私に回ってきたのである.ラジオ体操のおかげか,昨年末,2回行ったがん手術の後遺症もなく,今のところ,健康である.二,三日前,孫たちと草津温泉スキー場にスキーに行ってきた.残念ながら,足腰の衰えは覆うべくもなく,すぐ足が開いてしまい,直滑降もスピードが怖くなった.もっぱら初心者コースで楽しんできた.
私もときどき外出その他で参加できないことがあるのでラジオ当番は妻と共同で行っている.参加者はラジオを当てにして参加されているから責任重大である.これまで体操の直前に発生した地震情報放送のため,1, 2回ラジオ体操が中止になったことがあるが,あとは正月3日間だけ休む以外,年中無休である.参加者の平均年齢は各自のお年を訪ねたことはないが,70歳前後か.30名前後のうち,男性は2割,5-6名である.ほとんどの人と顔見知りであるが,名前のわかる人はいない.会話が大切ということは承知しているが,男性同士はダメ,あいさつ位であとは何を話題にしてもよいかもわからず,会話が続かないのである.それに比べて女性はすごい.よくもまあ話題があるものだと思われるくらい,体操をしながら話している人もいる.ようやく最近,2, 3名の女性と少し長く会話ができるようになった.一人はKさんで私より1歳上でひ孫もいる.40歳ころから意識して,元オリンピック体操選手の主催する体操教室に参加してきたとか,姿勢がよく体がしなやかで体操もうまい.大酒のみのご主人は2, 3年前,酔って2階から階段を転げ落ち,そのまま大往生,さばさばした気持ちの良い人である.Sさんは65歳前後か,非常に積極的な人で,放送大学の学生でもある.70歳までに単位を取得し,卒業するのが夢とか,時々,今試験中で昨日の試験はよくできたとかダメだったと教えられる.7年前,妻が乳がん手術で入院した際,自宅で栽培したというアジサイの花束をいただいた. 彼女がラジオ体操仲間の情報網の中心である.いろんなことを教わる.最近,夫を亡くした女性が気分転換のために放送大学に入学してきた.「彼女が専攻した科目は何だと思いますか」「わかりません」と私.「ファイナンス(財政学)なんですよ」.これには思わず笑ってしまった.女性はしたたかであると改めて思い知らされた.