2021年9月 9月の庭

 去る9月11日(土)、数日間雨模様の続いたあとの久しぶりの晴れの日、1週間ぶりに厚木の家に行った。縁側のガラス戸を開けると金木犀の香りが漂ってきた。先週は未だ、固いつぼみだと思ったのにもう満開を過ぎ、根元には橙色の粒々が落ちていた。この花の香を嗅ぐと何か懐かしくいろいろの思いが湧いてくる。妻は運動会を思い出すという。もう60年以上も前の大学時代、2年生までは川内(仙台市)の教養部で一般教養や基礎科目の授業を受け、3年生の後期から、週1日、確か金曜日の午後だったと思うが、本部のある片平丁の化学教室に赴き、専門課程の授業が始まった。構内には大きな金木犀の木が橙色の花を咲かせ、良い香りを放っていた。名前だけ聞いていた憧れの高名な先生の授業は難しくて良くわからなかったが、いよいよ専門課程に入るのだなと誇らしく、気の引き締まる思いがした。

 さて、我が家の庭である。夏の暑さにかまけて草取りをしなかった伸び放題の雑草の中からひときわ高く斑入りの芒が穂を伸ばし秋を告げている。酔芙蓉もずいぶん背丈が伸びて、蕾が大きくなり間もなく花を咲かせそうだ。彼岸花はまだ花芽を出さない。金木犀と咲く順序が入れ替わったようだ。水引なども赤い点々を付けている。

バーべキュウ用に並べたコンクリートブロック炉の隙間からも草が伸びている。現役時代はここで毎年、学生諸君と定年退職後はお隣さん一家とバーベキュウをやってきた。隣家には横浜国立大のY君がいて、彼から最近の大学の様子を聞くのが楽しみだったが、昨春、学位を取得、大阪の方に就職してしまった。そして、コロナ禍のため、昨年、今年はバーベキュウをパス、コンクリートブロック炉の出番がなかった。

 池の循環器がかすかな音を立て、3匹の錦鯉と5匹の金魚が早く餌をくれとばかりに泳ぎまわっていた。鯉は郷里の小千谷の錦鯉の養魚場で求めたものである。体長10 cmくらいだったのが、5年ほどかかって、“紅白” など今では30cm以上の大鯉になった。金魚の方は息子が孵化させたのをもらって水槽で育てていたが、体長20 cm近くになり、水槽で飼いきれなくなったので、横浜から厚木に持ってき、池に放ったのである。鯉と仲良く同居している。

 猫の額ほどの畑に今年はキウリを4本、トマトを6本植えた。キウリは10数本、トマトは30個くらい採れたか。今はもう枯れかけているが、暑さのためその気が起きず引き抜き、整地するのを先送りしている。大根、その他の秋野菜の種を蒔けばよいのだが、億劫になってきた。来年はなるべく手間を省き、多年草の花を植えようかなどと横着なことを考えている。