2015年11月 Made in China

201511  Made in China
 
夏ころ,永年愛用してきたS社製のCDアンプが壊れてしまった.プレイのボタンを押すと音楽演奏が始まらず,CD盤が収納場所から吐き出されてくるのである.数か月前までは一度電源を切ってから,やり直すと音楽演奏が始まることがあり,このようなやり方でだましだまし使ってきた.一度でダメな場合は何回か繰り返すとうまくいった.しかし,今回はいよいよ動かなくなったので某電気製品量販店へ修理依頼のために持っていった.「お客さん,製造年月日は何時ですか」と言われたので,型番を調べてみると1994年だった.なんと21年間も使ってきたのである.「もう製造中止ですから修理はできませんね.新調されてはいかがですか」と言われた.そこで,いくつかのメーカーのアンプを見て,音響機器では定評のあるP社製のものに決めた.音響機器にはピンからキリまであるが,こちらは耳の感度は悪いし,音楽が聴ける程度でいいからと数万円のものにした.帰宅して,段ボール箱を開き,アンプを取り出して驚いた.正面をよく見るとCDが出入りする収納口の上部の隙間が左側と右側でわずかに違っているのである.0.1-2mmくらいだっただろうか,左側の隙間が大きかった.CDは引っかかることもなく自由に出入りするし,音楽演奏にも差支えないから目をつぶろうかとも思ったが,どうにも気になって仕方がない.再び店に持っていき店員に確認してもらうと「確かにほんの少し,左側の隙間のほうが大きいですね.中国製はこんなものですよ」という.数台調べ,納得のいくのに取り替えてもらった.「ポイント還元はどうされますか.5年間保証はいかがですか」と聞かれた.電子機器の保証は1年間で,この間に故障をしても使用者側に落ち度がなければ無料修理が普通である.すなわち,製品価格を100 %保証するということである.これまでコンピュータをはじめ,いろんな機器で1年以内に故障したことはなく,少なくも数年間は異常がなかった.この店の仕組みとして,10ポイントが付き,値段は10 % 割引される.5年間保障とは,1年以内は100 %保証,あと1年後以降2年目まで故障の場合,製品価格の80 %保証,以後順次10 % づつ保証額が低下し,5年経過時で製品保証額は50 %になる.その場合,ポイント還元は5%という.10 % 割引は魅力的でありどうしようかと迷ったが,今回のようなことがあったので5年間保障の5 %割引にしてもらった.名だたる日本のメーカでも製品が中国で製造された場合には中国製となってしまう.そして,今回のように中国内の工場での品質管理が十分行き届いていなかったのである.品質管理,保障はメーカの必須義務であり,当然のことである.ところが,昨今,“ものづくり日本”と豪語していたMade in Japanにも怪しいものが出てきた.自動車のリコールは頻繁に起こっているし,最近では某者の高層ビルのくい打ち基準に満たされないものが多数発生,大きな社会問題になっている.あまりにも経済性を追求するあまり,関係者の良心がマヒしてしまっているように思えてならない.心の問題,したがって幼いころからの教育に根差していると考えるが,そこまで対応策は及んでいないようであり,後追いの形式的な追加規制の屋上屋的設定とそれによるチェック,チェックが続くことになり,これでは検査のための人手,時間,経費がいくらあっても足りなくなろう.当事者自身に誘惑に打ち勝つ仕事に対する強い義務感と仕事や任務に対する誇りがあれば問題は発生しないのである.
最近,研究室出身者のOB会があった.いずれも20台後半から40台後半のまさに社会の第一線で活躍中の人たちが集まってくれた.仕事とそして家庭を支える大黒柱として子育等に多忙な彼らが貴重な土曜日の午後を割いてよく出席してくれたと感謝している.その中に数人,会社で品質管理,保証部に属している卒業生がいた.良心に従って,くれぐれも検査基準等を緩めないように,また,上司からそのような暗黙の示唆があってもけっして従わないようにと話した.元教師はいつまでたっても説教癖が止まらない.