2015年10月 旅での出来事

201510月 旅での出来事
 去る10月末,学会で中国の西安を,そのあと知人を訪ね蘇州をと1週間ほど旅行をしてきた.これまで何回か海外を訪れたがそのたびに日常を離れた異なる環境で思いがけない体験をしてきた.気が短くおっちょこちょいの私の体験は多くが失敗談である.そのようないくつかを恥を忍んで述べる.
その一
 あらかじめ学会事務局から,ホテルへの手段として西安空港から空港バスで地下鉄“西安”駅まで行きそのあとはタクシーが良いと指示されていた.また,西安には二つのSheraton Hotelがある.一つはSheraton Xi’an Hotel,もう一つはSheraton North City Hotelで目的のホテルは前者であるから間違わないようにとの注意書きもあった.バスを降りたらものすごい人,人の群れである.タクシーをつかまえようとうろうろしていたら50歳代のおっさんに腕を掴まれた.中国語で何やらわめいているがさっぱりわからない.ちょうど通りかかった若い女性が英語で「こんな人ごみの中でタクシーなんかつかまらない.つかまっても渋滞でホテルまで時間がかかる,安くしておくから俺のオートバイに乗らないか」と言っていると教えてくれた.いくらかと聞いたらここだけは英語でten (10元,1元は19-20)と言った.案内によればタクシーは13元だった.彼は乗れ乗れと熱心にまくし立てるので思い切って乗った.スーツケースはオートバイの彼の足元に置き,私は後ろに乗った.途中スピードが出たので私は彼の背中にしがみつき,両腕を彼の腹を抱えるように前に廻した.15分か20分くらいで無事ホテルに着いた.10元を渡すと彼はにっこりし,手を振って去っていった.後期高齢者の老人が中年のおっさんにしがみつきオートバイに乗っている姿は傍からはずいぶん珍奇に見えたことであろう.あるいは雑踏の中では何でもありで,誰も目に留めていなかったかもしれない.
その二
 学会の中日の夜にはバンケット(懇親の宴会)があった.知人たちと楽しく会話し,ほろ酔い気分で学会のチャーターしたホテル行のバスに乗った.ホテルにつき私の部屋を開けようとキーをいじっていると中から見知らぬ若い男性が現れた.少し,廊下などの雰囲気が違うようだが,アルコールのためかと考え.念のためルームカードを見ても私の部屋のナンバーに間違いない.一応謝ってから,1階のフロントに行き掛け合おうかと思ったとき,はっと気が付いた.ここは Sheraton North City Hotelではないかと.フロントで確かめたらやはりそうだった.運が悪いことに同じ時期,私の参加したナノ材料に関するシンポジウムと“Euro-Asia Economic Forum”が開催されており,こちらにも私の知人を含め多くの日本人が参加していた.主催者の都合か同じ会場でバンケットが開かれており,後者の出席者の専用ホテルはSheraton North City Hotelだった.バスの乗車口でSheraton ・・・と目に入ればてっきり私の行先ホテルと思い込むのもむりはない.フロントでタクシーを呼んでもらい,ようやく,3泊もすれば懐かしいSheraton Xi’anHotelの私の部屋にたどり着いた.
その三
 帰路,夜11時少し前,成田に着いた.荷物取り出し口から次々と現れるスーツケースの中から私のを取り上げ,YCAT(横浜シテイエアーターミナル) 行最終バスに間に合うようにと急ぎようやく間に合った.夜中12時過ぎ帰宅,部屋に入ると妻が「このスーツケース違うんじゃない」と言い出した.表面は緑がかった青色で間違いないが,裏面は黒,私のは両面青である.当然ながらキーを差し込んでも開けることができない.取り違えの原因は永年使い込んだスーツケースが壊れたので新調しようかと思ったが,出費を惜しみ娘のを借りたことである.暗い照明の中,バスに乗り遅れないようにと焦っていたこともあり,青いスーツケースの表面を見て,すっかり自分のものと信じ込んだのである.空港客室係に電話しても,業務は終わっていた.翌朝電話したら,直接利用した中国東方航空の方に電話するようにとのことだった.そこで,中国東方航空に電話したら,航空機離着陸業務中のため部屋を空けている,後ほどおかけ直しくださいとの少しなまりのある声でテープが流れた.何回か電話し,ようやく連絡が取れたところ,業務提携している日本航空の方におかけ直しくださいとのことだった.お客担当係の番号を教わって電話し,ようやく連絡が取れた.こちらのスーツケースの特徴を述べると少し待たされたが,確かに保管しているとのこと,直接引き取りに来るか,宅配便(着払い)で送ろうかと問われ,ばかばかしいが,もう一度成田空港に行くことにした.指定された部屋に行き,パスポート番号,利用便,スーツケースの特徴など所定の用紙に記入した.税関チェックに時間がかかっているとか,20-30分またされたのち,ようやく私のスーツケースが現れた.「お客様,運よくスーツケースは開けられませんでした」と応対してくれた女性が言った.私はこれまでイスラエルに行ったとき以外税関で荷物を開けられたことはなかったが,機械的にある確率で税関の係員は開けるらしいとちらっとその女性が言った.間違った相手の方には大変迷惑をかけた.プライバシー保護のため相手の名前は教えてもらえなかった.先方への宅配便料金を支払って帰宅した.もう数十回海外旅行をしたが,こんな失敗は初めてである.