2016年2月 如月

20162月 如月
 
 先頃新年を迎えたと思ったらもう2月も中旬である.一年を通して最も寒いこの月がへそ曲がりかもしれないが,私は最も好きである.風邪を引かないように気を付けさえすれば,心身ともにと言いたいところであるが,少なくとも,体はしゃんとし快調である.歩くのも早くなる.天気図に東西に幅の狭い等圧線が引かれることの多いこの月は,故郷(新潟県小千谷片貝町)では時に吹雪が舞い,ほぼ毎日雪が降ったりやんだりであるが,こちらは申し訳ないことに毎日快晴である.冬,特に2月が好きになったのは,就職のためこちらに移ってきてからのこの天候のためのような気がする.普段は留守にしている厚木の家の庭では池の鯉はじっと岩陰に隠れて動かないが,福寿草が芽を出し,黄色い蕾もついている.豊後梅,沈丁花が間もなく咲きそうである.白木蓮の蕾もずいぶん大きくなった.もうそこまで春が来ているのである.30年ほど前に裏山から採ってきた春蘭は未だ蕾を出さない.今年は咲くだろうか.カタクリが芽を出すのは3月になってからだろう.これは厚木市内のもうなくなってしまった山野草店から昔買い求めたものであるが,毎年紫色の花を1輪だけ付ける.1株だけでは増えないようだ.横浜ではもうあちこちで梅が咲いているが,厚木は少し山寄りで気温が低いためか,花の開花はなんでも半月から1か月程度遅れるようである.梅が咲いたら,枝を切るのが楽しみである.我が家の梅はまだ,成長を続けているようで,5月から6月にかけ徒長枝がものすごい勢いで伸びる.放っておけばとてつもない大木になるので,これを防ぐために毎年切り取っているが,これが大仕事である.そこで2月,花が咲いているうちに伸びそうな枝をあらかじめ切り取っておくと6月の作業がかなり楽になる.この花のついた枝を使わなくなった漬物用の常滑焼の壺に生けるのは妻の役目である.横浜に持ち帰り,マンションの玄関に置くと良い香りを放ち,皆さんに喜ばれる.ささやかな楽しみである.
2月中旬,帰省した.昨年は1m以上あった積雪も屋根では20cm位,田畑で70-80cmくらいだろうか.中学校脇の積雪計は68cmを示していた.このまま,屋根の雪下ろしもなく春が来てくれればよいのであるが.運よく快晴の日に当たった2日目は朝方すごく冷えた.眠っていても顔,首のまわりが冷え目が覚めたので.タオルで頭から頬被りをした.その朝は凍み渡りができた.風邪の無い放射冷却の起こるような日は少し溶けかかった雪が凍り,体重をかけてももぐらなくなり,道の無い雪原を自由に歩くことができる.長靴の底を通してゾリゾリと伝わる忘れていた感触を思いだした.午後,散歩に出かけた.家を出て西の方に500mも歩けばもう里山が迫り,谷川が流れている.毎年,フキノトウの出る湧き水ところまで行ってみたが,未だ早いらしく1個も見つからなかった.ショウジョウバカマが薄紫色の花をつけるのももう少し先らしい.雪原のいたるところに兎の足跡が見られた.彼らの走っている姿が見えないかと谷間の雑木林のあちこちを見回したが,用心深い彼らが明るい日中姿をさらすはずもあるまい.東南の方向に雪に輝く越後三山が見えた.この日の万歩計は12000歩を示していた.間もなく春が来る.2月はそのような春の予兆の月なのである.