2013年9月 ケレタロ(メキシコ)に旅して

20139月  ケレタロ(メキシコ)を旅して
 去る98日から15日まで開催の学会でポスター発表を行うためにケレタロ市に出張した.その際の出来事や印象などを以下に述べたい.
○学会について
国際電気化学会議(International Society of Electrochemistry)と称し,今回第64(出席者約2,400)を迎えた.この学会はヨーロッパ起源でスイスに本部があるが,現在は世界中の電気化学の研究者が会員である.大会の開催地はオリンピックと同じように世界中を巡っており,日本でも過去2回開催された.ほかにアメリカに本部を置くElectrochemical Society があるが,こちらも世界中の電気化学者が会員となっており,私もそうであるが,両者の会員である研究者が多い.大会では,電池,めっき,表面処理,センサー,水処理,腐食防食,その他電気化学に関するあらゆる内容が口頭とポスターでその研究成果が発表される.論文の要旨はかっては分厚くて持ち運びに厄介な冊子が発行されたが,今はCD,1枚が渡されるだけである.したがって,その場で内容を知りたくてもコンピュータがなければお手上げである.よし悪しである.プログラムだけは紙製の冊子であるので,これを頼りに聞くべき,あるいは見るべきポスターを捜して10以上ある会場を渡り歩くことになる.ポスターは85 cm() x 115 cm()くらいの大きさに指定されており,かってはこれを筒に入れて持ち運んだが,サイズが大きすぎ飛行機の機内に手荷物で持ち込むことができなかった.そのため,スーツケースと同じ扱いにしなければならなかった.スーツケースはともかくポスターの筒が行方不明になって慌てたこともあった.今は印刷機の進歩で布製の台紙に印刷可能となり,折りたたんで運べるようになった.私の発表はリチウムイオン電池の正極反応物質高容量化に関わる内容でこの分野のトップデータと思われる.共同研究者のKさん(9月から岡崎にある分子研の准教授に栄転)の好意で彼の採取データを使わせてもらった.韓国,中国の研究者からの質問が非常に多かった.不思議なことがあった.バンケット(晩餐会)の最後にポスター賞の発表があり,名前を呼ばれた若い研究者たちが次々10数名檀上に上がった.最後に“Yuichi Sato, Japan ”と名前を呼ばれたときはびっくりした.この賞は本来,若い研究者を激励するためのものである.審査員のご厚意か,まさか大学院生と誤認されたわけでもあるまいに,とにかくありがたく頂戴してきた.たぶん,私はポスター発表者のうちでも最年長の一人であろう.老人を励ますという意味で賞の性格が少しかわったのかもしれない.副賞200米ドルはKさんと山分け,私の分はお土産のテキーラに化けた.
  ケレタロ市について
 メキシコシテイから約200 km北西にあるメキシコ第3の都市で,各地で先住民族が奴隷のように扱われたのに対し,ケレタロではスペイン人の入植者と先住民のチチメカ人がうまく共存してきたといわれている.旧市街地は50 cm x 20 cmくらいの長方形の石が敷き詰められた石畳みの道路で道幅は5 m位か,道路の両側は幅1.2 m位の歩道になっている.この細い道路を一方通行の車が頻繁に走っている.道路の右片側には車が,よくまあと思われるくらいせまい間隔で縦列駐車している.私にはとてもこんな駐車はできない.道路は凸凹でタイヤの摩耗が激しかろうと思われた.タクシーは車体が黄色に塗られた日産車がほとんどであった.ほかにホンダ,BMW, GM車がよく見られたが,トヨタはほとんど見かけなかった.915日が独立記念日とか,その前で街は活気に満ちていた.毎晩花火が揚がっていた。ある日の夕方,原住民の子孫たちが民族衣装を着飾って太鼓のリズムに合わせ,何kmも練り歩いた.不思議なことに歌声や音楽はなかった。
言葉はスペイン語で英語はホテルのマネージャー以外全く通じず困った.もっとも私の英語も怪しいもので,いつかアメリカに行ったとき,レストランで請求書を要求するつもりで「ビル(bill), プリーズ」といったところ,ビール(beer)を持ってこられたのには困った.それ以来,妻は外国に行ったときにはいつもこの失敗を持ち出す.レストランでは英語付のメニュウを指さし,買い物の値段は紙に書くか,計算機に表示してもらった.
美人は全く見かけなかった.5歳くらい以下の女の子はとてもかわいらしい顔つきをしているのに高校生くらいになるともうダメ,私の美人の基準が狂っているのかもしれない.
若い母親たちも太った人が多かった.食べ物は比較的安くおいしかった.「地球の歩き方」にはすりやひったくりに注意するよう記載されているが,治安はよく,ニューヨクやパリ,ミラノのような危険を全く感じなかった.
  両替の不思議
 成田空港で円からメキシコの通貨,ペソに両替した.レートは1ペソ, 9.27円,したがって1 = 0.108 ペソとなる.メキシコに行ってから,手持ちのペソが心細くなったので,両替をした.円からペソへの両替はできず,幸い持って行った米ドルから行ったところ,レートは1ドル,12.2 ペソだった.1ドル100円とすれば,ドルからペソに両替すれば,1円当たり0.122ペソとなり,非常に有利になることがわかった.円が強いといっても遠く離れた南米には円の力は及んでいず,なんといってもドルが強いことを実感した.
買い物やレストランではペソで表示の価格を10倍すれば円での感覚がほぼつかめるので便利だった.
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